機械部品加工・製造の⽣産性を上げる⾃動希釈装置ガイド
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切削油の環境問題について

切削油は金属加工に欠かせない潤滑剤ですが、その使用に伴う環境問題は深刻な課題です。特に、地球環境への負荷と作業者の健康被害の二つの側面から注目されています。切削油やその廃液、スラッジが適切に処理されない場合、水質・土壌・大気汚染を引き起こし、さらに有害物質の含有やオイルミストの発生が作業環境の悪化を招くからです。この記事では、こうした切削油の環境問題とその対策、最新の技術動向について詳しく解説します。

切削油の主な環境問題

切削油の環境問題には、水質・土壌・大気汚染や有害物質の含有、オイルミストの発生による問題、スラッジの蓄積による問題などがあります。ここでは、それぞれの問題がどのように発生するのかを解説します。

水質・土壌・大気汚染

切削油やその廃液、またスラッジ(油と金属粉の混合物)が適切に処理されない場合、水質汚染・土壌汚染・大気汚染などの環境問題を引き起こします。例えば、廃油やスラッジが不法投棄された場合、油成分や有害物質が河川や地下水に流出し、水生生物や飲用水資源に悪影響を及ぼすほか、土壌にも残留して長期的な環境汚染の原因となります。また廃液や油を焼却処理した際には、ダイオキシンや有害ガスが発生することで大気を汚染するリスクも高いです。不適切な処理や排水規制違反は、環境への悪影響を深刻化させます。

有害物質の含有

従来の切削油には、塩素系化合物やPRTR法で指定された有害物質が含まれていて、これらの燃焼時にはダイオキシンや環境ホルモンの発生リスクがありました。特に塩素化パラフィンなどの塩素系極圧剤は安価で効果的な一方、環境負荷が大きく、塩素ガスや有害化学物質の発生源になっていました。これらの成分は法規制の強化やJIS規格の改正により使用制限が進み、環境負荷の低減を目的に塩素フリーの切削油剤への切り替えが促進されています。また、PRTR対象物質も代替品の開発により削減が進んでおり、現在では環境保全に配慮した切削油の普及が進んでいます。

オイルミストの発生

加工時に発生するオイルミストは、切削油が高速回転する工具や加工物との摩擦で微粒子化し空気中に飛散したものです。このミストは、工場内外の大気環境を汚染し、周辺環境への悪影響をもたらします。オイルミストが設備や電子機器に付着するとショートや故障の原因となり、設備のメンテナンスコスト上昇や機械寿命の短縮につながる悪影響も見逃せません。オイルミストによる空調効率の低下はエネルギー消費の増大とCO₂排出の増加につながり、地球温暖化の一因ともなります。

スラッジの蓄積

切削油スラッジとは、金属加工時に発生する微細な金属粉と切削油の混合物で、クーラントタンクなどに蓄積しやすい性質があります。スラッジを放置すると、配管やポンプの詰まりによる機械トラブルや生産停止、クーラント液の冷却性能低下、加工精度の悪化、工具寿命の短縮などの問題が生じます。さらに、スラッジは細菌繁殖や悪臭の原因となり、作業環境を悪化させます。適切に処理されずに廃棄されると、土壌や水質汚染のリスクもあります。工場では定期的な回収・適切な処理が不可欠です。

対策と動向

ここまで切削油の環境問題の発生過程をみてきました。さまざまなリスクがありましたが、近年は有効な対策が取られるようになっています。ここでは、切削油の環境問題の対策について、動向を確認していきましょう。

環境対応型切削油の開発

切削油の環境負荷低減を目的に、塩素フリー・アミンフリー・窒素フリーなどの環境対応型切削油の開発と導入が進んでいます。これらの切削油は、従来の塩素系極圧剤や有害添加物を排除し、人体や自然環境への悪影響を抑制できます。特に植物由来成分の使用や生分解性の向上により、廃棄時の環境負荷も軽減しています。また、切削ミストの発生や刺激臭が少なく、作業環境の安全性向上にも寄与します。

ドライ加工・MQL加工の導入

金属加工現場では、環境負荷低減と生産性向上を両立するため、切削油の使用量を大幅に削減する技術が注目されています。代表的な手法が、切削油を使用しないドライ加工と、極微量の切削油をミスト状にして加工点に供給するMQL(Minimal Quantity Lubrication)加工です。MQL加工では従来の加工に比べ、年間切削油使用量を1/20~1/50に減らせるので、廃油・廃液の削減や作業環境の改善に寄与します。また、油の飛散や排水処理の負担が軽減され、機械のエネルギー消費も削減できます。

廃油・スラッジの適切な回収・処理

切削油の廃油やスラッジは、環境汚染や排水規制違反のリスクを避けるため、適切な回収と処理が不可欠です。スラッジ回収装置や濾過・遠心分離などの技術を活用し、クーラント液中の微細な金属粉や油分を効率的に分離・回収する方法が導入されています。回収した廃油やスラッジは汚れや水分を除去し、リサイクルや安全な廃棄処理に回されます。これらの対策により、排水規制への適合はもちろん、廃棄物量の削減や資源の有効活用が進展しています。

社会的責任の観点でも切削油の環境問題への取り組みは重要

切削油の環境問題は、水質や大気・土壌汚染、有害物質の含有、オイルミストの発生、スラッジの蓄積など多岐にわたり、その適切な処理と管理が求められています。近年は塩素フリーやアミンフリーなど環境負荷の低い切削油の開発や、使用量を削減するドライ加工・MQL加工の導入も進んできました。廃油・スラッジの回収・再利用を含む適正処理により環境負荷の軽減に取り組んでいます。このような対策は法規制強化や企業の社会的責任の観点からますます重要となっていて、持続可能なものづくりの推進に欠かせません。

現場の生産方式別・切削油
(クーラント)

⾃動希釈装置3選

ここでは、生産方式別に切削油(クーラント)を自動供給できる希釈装置を紹介します。自社の生産方式に合わせて適切な装置を導入し、生産性アップ・業務負担の低減・コストダウンを目指しましょう。

連続生産方式
現場には
自動希釈装置
「MAKKY-MINI 65-D」

Makky Mini 65-D(真岐興業株式会社) 引用元:真岐興業株式会社
(https://makky.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈液をエアーポンプで供給する方式を採用。加圧タンク不要で内圧の変動による作業中断の発生なし。長時間の連続稼働でも希釈液を安定供給。
  • 離型剤(原液)の空容器を希釈液のタンク代わりにして利用する仕組み。専用タンクを必要としないため、洗浄や補充による作業中断が無い
  • 生産環境や特殊な作業条件に合わせて機能追加可能。圧送ポンプの自動復帰回路やマシンインターロック、凍結防止ヒーターなど。

公式サイトで
装置の仕様をチェック

受注生産方式
現場には
クーラント自動希釈装置
「MX-600C」

クーラント自動希釈装置(株式会社CEM) 引用元:株式会社CEM
(https://www.kcem.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈率を1.0~20.0%の範囲で精度±0.2%で管理。受注生産方式で求められる製品ごとに異なる濃度に設定できるため、個別の品質基準にも対応可
  • 使用量や濃度設定を記録する機能があるため、受注ごとの履歴管理可。品質管理の問い合わせにも対応しやすく、受注生産の信頼性が高まる。
  • 一つの装置で複数の異なる希釈率を同時に設定・供給可能(オプション機能) 。顧客のニーズや仕様に応じた対応ができる

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ロット生産方式
現場には
クーラント液管理システム
「Will-Fill AIO」

クーラント液管理・自動調整システム(WILL-FILL) 引用元:WILL-FILL
(https://will-fill.com/ja)

特徴
  • クーラント液のレベルや濃度、水圧、ポンプの速度など、12種類のパラメータを同時に測定・管理可。異なる製品ごとに別の条件が必要になるロット生産に適する。
  • クーラントの残量監視と補給機能により、異なるロットでも連続して作業が行われる。手動操作が少なく、生産の流れを途切れさせない。
  • 定期的にクーラント液の状態を整える機能を搭載。液体成分が均一に保つことができ、ロットごとの品質ばらつきを防げる

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装置の仕様をチェック