機械部品加工・製造の⽣産性を上げる⾃動希釈装置ガイド
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エマルションとソリュブルの違い

水溶性切削油は工作機械の性能を大きく左右します。この記事では、エマルションタイプとソリュブルタイプの水溶性切削油の違いに焦点を当て、各タイプの利点と使用上の注意点を詳しく解説します。

目次

エマルションタイプと
ソリュブルタイプの違い

エマルションタイプとソリュブルタイプの水溶性切削油は、その希釈時の外観と性能において明確な違いを持っています。

外観の違い

エマルションタイプの切削油は、水に希釈すると乳白色になります。これは、鉱油などの不溶性の成分が微細な粒子として水中に分散しているためです。対照的に、ソリュブルタイプの切削油は希釈後、透明または半透明となる傾向があります。これは、水に溶ける成分が使用されているためです。

希釈倍率

エマルションタイプの切削油は一般的に10~30倍の範囲で希釈して使用されます。この範囲内で適切な潤滑性と保護性が提供されるように設計されています。一方、ソリュブルタイプの切削油はより広い範囲、10~50倍の希釈率で使用されることが多いのが特徴です。

性能の違い

ソリュブルタイプは洗浄力と冷却効果に優れています。これは、水溶性の成分が切削面の汚れや熱を効率的に除去するからです。しかし、潤滑性に関してはエマルションタイプに劣る場合が多いです。エマルションタイプの切削油は、その高い潤滑性により、特に重切削作業での摩耗と熱の軽減に効果的です。

適用の違い

エマルションタイプは特に重切削や大きな切削抵抗が発生する作業に適しています。一方、ソリュブルタイプは洗浄や冷却が特に求められる作業や、さまざまな金属の軽切削から中切削に適しており、幅広い用途で利用されます。

エマルションタイプの
切削油の特性

エマルションタイプの切削油は、水と混ぜることで特徴的な乳白色に変化します。このタイプの切削油には主に鉱物油が豊富に含まれており、以下のような顕著な特性を提供します。

高い潤滑性

エマルションタイプの切削油は、その構成成分により、加工中の摩擦を著しく減少させることができます。これにより、工具の摩耗を抑え、その寿命を顕著に延ばすことが可能です。これは、特に連続的な生産活動でのコスト削減に直結します。

幅広い適用範囲

このタイプの切削油は、鋳鉄や非鉄金属、さらには鋼など多岐にわたる材質の加工に適しています。特に、重切削が必要な作業環境での性能が優れているため、工業製造の現場で広く採用されています。

エマルションタイプの
切削油の製品例

以下は、市場で入手可能ないくつかのエマルションタイプの切削油の例です。

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製品名JIS分類特徴容量
エマルカット TAF-110NA1種2号幅広い材質の加工に対応し、切削性と防錆性に優れています。全般的な加工に適用可能で、独自の成分配合により耐腐敗性が向上し、混入油の過剰乳化を防ぎます。200Lドラム、18L缶
エマルカット TAF-510NA1種2号アルミニウム合金からステンレス鋼まで、特に腐敗や混入油の問題が発生しやすい環境での使用に適しています。200Lドラム、18L缶
エマルカット TAF-328 NEWA1種2号軽量化や複雑な精密加工、高速加工に適した切削油で、高い潤滑性と防錆性、耐硬水性を兼ね備えています。200Lドラム、18L缶
エマルカット DC-60R NEWA1種2号アルミニウム合金から鉄系金属までの量産加工から精密加工に至るまで幅広く使用可能。溶けやすく、作業環境の汚れを減少させ、特に自動車部品の加工に適しています。200Lドラム、18L缶

ソリュブルタイプの
切削油の特長と
製品ラインナップ

ソリュブルタイプの切削油は、水に溶ける成分のみを使用し、希釈時には透明または半透明になることが特徴です。界面活性剤を豊富に含むこのタイプの切削油は、以下のような利点を提供します。

優れた冷却効果と洗浄力

ソリュブルタイプの切削油は、加工中に発生する熱を効率的に管理し、同時に加工物の表面を清潔に保つことができます。

幅広い材料への適用性

鋳鉄やさまざまな金属の切削・研削加工に対応する柔軟性を持ち、多岐にわたる加工条件に適応します。

ソリュブルタイプの
切削油の製品例

▼スクロールできます▼

製品名JIS分類特徴容量
エマルカット TAF-910A2種2号防錆性と消泡性に優れ、新規防錆システムによりクーラントの褐色化を抑制し、長期間にわたるクーラント寿命の延長を可能にします。200Lドラム、18L缶
エマルカット FA-500SA2種2号抗菌性を持ち、切削油の長寿命化と作業環境の清潔さを保つことが可能。特に鋳鉄部品の加工に適切です。200Lドラム、18Lペール缶
エマルカット TAF-610RA2種1号鉄や鋳鉄などの材料加工に特化。不揮発分の再溶解性に優れ、作業環境の清潔さを維持します。高い防錆性と耐腐敗性を誇ります。200Lドラム、18Lペール缶
マルチクール HPS-105A2種2号合成潤滑剤を配合したオイルフリー透明タイプで、低ベタつき性と高い耐腐敗性を実現。環境改善にも貢献します。200Lドラム、20L缶
マルチクール HPS-500A2種1号合金鋼やステンレス鋼の加工に適したオイルフリー透明タイプ。高圧クーラントシステムに対応し、優れた消泡性を持つ。200Lドラム、20L缶

水溶性切削油の効果を
引き出すには

水溶性切削油の効果を引き出すには、適切な濃度管理が重要です。自動希釈装置を使用することで、以下のメリットがあります。

まとめ

エマルションタイプとソリュブルタイプの切削油は、それぞれ異なる特性を持っており、加工の種類や求められる品質によって選択する必要があります。このガイドを参考に、工作機械に適切な切削油を選んでください。

関連リンク

現場の生産方式別・切削油
(クーラント)

⾃動希釈装置3選

ここでは、生産方式別に切削油(クーラント)を自動供給できる希釈装置を紹介します。自社の生産方式に合わせて適切な装置を導入し、生産性アップ・業務負担の低減・コストダウンを目指しましょう。

連続生産方式
現場には
自動希釈装置
「MAKKY-MINI 65-D」

Makky Mini 65-D(真岐興業株式会社) 引用元:真岐興業株式会社
(https://makky.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈液をエアーポンプで供給する方式を採用。加圧タンク不要で内圧の変動による作業中断の発生なし。長時間の連続稼働でも希釈液を安定供給。
  • 離型剤(原液)の空容器を希釈液のタンク代わりにして利用する仕組み。専用タンクを必要としないため、洗浄や補充による作業中断が無い
  • 生産環境や特殊な作業条件に合わせて機能追加可能。圧送ポンプの自動復帰回路やマシンインターロック、凍結防止ヒーターなど。

公式サイトで
装置の仕様をチェック

受注生産方式
現場には
クーラント自動希釈装置
「MX-600C」

クーラント自動希釈装置(株式会社CEM) 引用元:株式会社CEM
(https://www.kcem.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈率を1.0~20.0%の範囲で精度±0.2%で管理。受注生産方式で求められる製品ごとに異なる濃度に設定できるため、個別の品質基準にも対応可
  • 使用量や濃度設定を記録する機能があるため、受注ごとの履歴管理可。品質管理の問い合わせにも対応しやすく、受注生産の信頼性が高まる。
  • 一つの装置で複数の異なる希釈率を同時に設定・供給可能(オプション機能) 。顧客のニーズや仕様に応じた対応ができる

公式サイトで
装置の仕様をチェック

ロット生産方式
現場には
クーラント液管理システム
「Will-Fill AIO」

クーラント液管理・自動調整システム(WILL-FILL) 引用元:WILL-FILL
(https://will-fill.com/ja)

特徴
  • クーラント液のレベルや濃度、水圧、ポンプの速度など、12種類のパラメータを同時に測定・管理可。異なる製品ごとに別の条件が必要になるロット生産に適する。
  • クーラントの残量監視と補給機能により、異なるロットでも連続して作業が行われる。手動操作が少なく、生産の流れを途切れさせない。
  • 定期的にクーラント液の状態を整える機能を搭載。液体成分が均一に保つことができ、ロットごとの品質ばらつきを防げる

公式サイトで
装置の仕様をチェック