機械部品加工・製造の⽣産性を上げる⾃動希釈装置ガイド
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希釈の仕方と希釈液の性状

水溶性切削油は、適切な希釈比率と質の高い希釈用水を使用することで、その性能を最大限に引き出すことができます。本記事では、水溶性切削油の希釈の仕方と希釈用水の性状について解説します。

目次

水溶性切削油の希釈方法

水溶性切削油の適切な希釈は、その性能を最大限に引き出し、加工品質を高める上で重要です。希釈の際には、特定の手順と注意事項を守ることで、ゲル化や乳化不良といった問題を避けることができます。

  1. 水を先に入れる
    希釈プロセスを始める際には、まず希釈用の水を容器に入れます。その後、水溶性切削油の原液をゆっくりと加えていきます。この順序を逆にすると、原液がゲル状になり、水と均一に混ざりにくくなる恐れがあります。
  2. 速やかにかつ均一に撹拌する
    原液を希釈水に加えた後は、速やかに撹拌して原液と水が均一に混ざるようにします。エマルションタイプの切削油の場合、重力により原液が沈むため、徐々に加えつつしっかりと攪拌することが重要です。
  3. 推奨濃度の遵守
    水溶性切削油の効果を最大限に引き出すためには、製品に推奨されている濃度を守ることが肝心です。推奨濃度を下回ると、切削油の機能不足により腐敗や錆の発生を招き、逆に濃度が高すぎると無駄に原液を消費しコストが増大します。

エマルションやマイクロエマルションタイプの切削油を使用する場合、特に慎重な希釈が求められます。これらの製品は、水に溶けない成分を多く含むため、不適切な希釈手順や不十分な撹拌は乳化不良や分離といった不具合の原因です。

そのため、新液の投入や補給時には、液体を事前に循環させてから原液を加え、均一な状態になるまで十分に撹拌することが推奨されます。

正しい希釈方法と維持管理を行うことで、水溶性切削油はその性能を最大限に発揮し、加工品質の向上や生産効率の向上に寄与します。

水溶性切削油の希釈の必要性

水溶性切削油は、その名の通り水と混合して使用する油です。正しい希釈比率で混合された切削油は、冷却性、潤滑性を最大限に発揮し、工作機械の摩耗を減少させるだけでなく、加工品質の向上にも寄与します。

希釈用水の性状とその影響

水溶性切削油の性能を最大限に引き出すためには、希釈に使用する水の性状を正確に理解し、適切に管理することが不可欠です。水質の違いが切削油の冷却性、潤滑性に及ぼす影響は意外と大きく、不適切な水質はさびや腐敗を引き起こし、切削油本来の効力を損なう原因となります。

特に、水の硬度、pH値、塩素イオン濃度、蒸発残さ物量などは、切削油との相性を左右する重要な指標です。例えば、水の硬度が高すぎると、切削油の乳化不安定、さびの発生、腐敗の加速などが起こりやすくなります。また、pH値が極端に高いまたは低い水を使用すると、液体の不安定化や腐食の原因になり得ます。

工場の位置や使用する水の種類(水道水、井戸水、工業用水など)により、水質は大きく変動するため、定期的な水質チェックは切削油の性能維持に不可欠です。不純物が多い水を使用した場合、白濁や浮上物(スカム)の生成、さらには浮上油の問題など、さまざまなトラブルの原因となります。

これらのトラブルを未然に防ぐため、切削油を希釈する前には水質を調べ、適切な条件に近づけることが推奨されます。全硬度は30~100mg/L、pHは6.5~7.5、塩素イオンは30mg/L以下、蒸発残さ物は200mg/L以下が適切な基準とされています。これらの基準を満たす水質の管理を徹底することで、切削油の性能を最大限に活かし、製品品質の向上とコスト削減につながります。

自動希釈装置のメリット

自動希釈装置の導入は、水溶性切削油の希釈プロセスを適正化し、多くのメリットを提供します。これらの利点は、特に製造業での生産性の向上、品質保持、コスト削減に直結します。以下は、自動希釈装置の主なメリットです。

正確な希釈比率の維持

自動希釈装置は、切削油と水の混合比率を正確に制御します。これにより、手動で行う希釈プロセスに比べて、一貫性と精度が向上し、切削油の性能を適切にできます。正しい比率で希釈された切削油は、工作機械の冷却と潤滑性能を最大限に引き出し、加工品質を向上させます。

労力と時間の削減

自動希釈装置は、希釈プロセスを自動化することで、作業者の時間と労力を大幅に節約します。従来の手動希釈作業に比べて、より効率的に作業が行え、生産性の向上に貢献します。

エラーの削減

手動での希釈作業は、人為的ミスによる誤った混合比率のリスクが伴います。自動希釈装置を使用することで、この種のエラーを大幅に減少させることができ、結果として一貫した品質の維持に繋がります。

継続的な品質管理

自動希釈装置は、切削油の品質を継続的に監視し、必要に応じて希釈比率を調整する機能を備えている場合があります。これにより、希釈用水の性状が変化した場合でも、切削油の品質を一定に保つことが可能になります。

コスト削減

自動希釈装置による正確な希釈比率の維持は、切削油の過剰使用を防ぎます。また、切削油の性能を適切にすることで、切削油の交換頻度の低下や、工作機械の摩耗の減少にも繋がり、長期的なコスト削減に貢献します。

環境への配慮

正確な希釈比率と効率的な使用は、不必要な廃棄物の生成を減らし、環境負荷の軽減にも寄与します。また、自動希釈装置による一貫した品質管理は、切削油の使用量を適切にし、環境に優しい製造プロセスを支援します。

これらのメリットにより、自動希釈装置は水溶性切削油の希釈プロセスにおいて重要な役割を果たし、製造業での効率性、品質、コストの面で大きな利点を提供します。

関連リンク

現場の生産方式別・切削油
(クーラント)

⾃動希釈装置3選

ここでは、生産方式別に切削油(クーラント)を自動供給できる希釈装置を紹介します。自社の生産方式に合わせて適切な装置を導入し、生産性アップ・業務負担の低減・コストダウンを目指しましょう。

連続生産方式
現場には
自動希釈装置
「MAKKY-MINI 65-D」

Makky Mini 65-D(真岐興業株式会社) 引用元:真岐興業株式会社
(https://makky.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈液をエアーポンプで供給する方式を採用。加圧タンク不要で内圧の変動による作業中断の発生なし。長時間の連続稼働でも希釈液を安定供給。
  • 離型剤(原液)の空容器を希釈液のタンク代わりにして利用する仕組み。専用タンクを必要としないため、洗浄や補充による作業中断が無い
  • 生産環境や特殊な作業条件に合わせて機能追加可能。圧送ポンプの自動復帰回路やマシンインターロック、凍結防止ヒーターなど。

公式サイトで
装置の仕様をチェック

受注生産方式
現場には
クーラント自動希釈装置
「MX-600C」

クーラント自動希釈装置(株式会社CEM) 引用元:株式会社CEM
(https://www.kcem.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈率を1.0~20.0%の範囲で精度±0.2%で管理。受注生産方式で求められる製品ごとに異なる濃度に設定できるため、個別の品質基準にも対応可
  • 使用量や濃度設定を記録する機能があるため、受注ごとの履歴管理可。品質管理の問い合わせにも対応しやすく、受注生産の信頼性が高まる。
  • 一つの装置で複数の異なる希釈率を同時に設定・供給可能(オプション機能) 。顧客のニーズや仕様に応じた対応ができる

公式サイトで
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ロット生産方式
現場には
クーラント液管理システム
「Will-Fill AIO」

クーラント液管理・自動調整システム(WILL-FILL) 引用元:WILL-FILL
(https://will-fill.com/ja)

特徴
  • クーラント液のレベルや濃度、水圧、ポンプの速度など、12種類のパラメータを同時に測定・管理可。異なる製品ごとに別の条件が必要になるロット生産に適する。
  • クーラントの残量監視と補給機能により、異なるロットでも連続して作業が行われる。手動操作が少なく、生産の流れを途切れさせない。
  • 定期的にクーラント液の状態を整える機能を搭載。液体成分が均一に保つことができ、ロットごとの品質ばらつきを防げる

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