機械部品加工・製造の⽣産性を上げる⾃動希釈装置ガイド
機械部品加工・製造の⽣産性を上げる⾃動希釈装置ガイド » 切削油にまつわるお悩み・トラブル対策集 » 切削油の飛散防止と作業環境対策について

切削油の飛散防止と作業環境対策について

切削作業では、工具と加工物の摩擦により切削油が飛散し、作業環境や作業者の健康に影響を及ぼすことがあります。特に微細な液滴となって漂う「ミスト」や、高温で発生する「油煙」は、吸入や付着による健康リスクの原因となります。この記事では、切削油自体の特性を活かしたミスト抑制策や、作業環境対策、作業者の健康保護のポイントについて詳しく解説します。

オイルミストの発生機構と種類

切削作業では、工具や加工物に切削油が当たることで微細な液滴が空気中に漂う「ミスト」と、切削油が高温で蒸発・分解して発生する「油煙」の二種類の飛散が問題となります。ミストは目に見える液滴として作業環境に広がりやすく、油煙は目に見えにくく吸入による健康リスクが高いです。作業環境対策では両者の発生機構と特性を理解し、捕集装置や換気設備の設置、油の種類や粘度の適正化など、ミストと油煙それぞれに応じた防止策を講じる必要があります。

切削油自体によるミスト発生の抑制策

オイルミストは作業環境や健康への影響が懸念されるため、発生したミストを除去しなければいけません。しかし切削油自体の選択により発生そのものを抑制できます。ここでは、切削油自体によるミスト発生の抑制策を紹介します。

切削油の粘度を上げる

切削油のミスト発生を抑制する方法のひとつが、油剤の粘度を上げることです。粘度を高めることで、切削中に油が微粒子化しにくくなり、空気中に漂うミスト量を減らす効果があります。しかし、粘度が高くなると加工物表面や切り屑への油の付着量も増加する点に注意が必要です。切削効率や後処理の手間が増える可能性があります。ミスト抑制と加工性・経済性のバランスを考慮し、適切な油剤選定と管理が必要です。

ミスト抑制剤を添加する

切削油のミスト発生を抑えるもう一つの方法が、ミスト抑制剤を添加することです。この方法では、油剤自体の粘度を変えずに、空気中への微粒子化を抑える成分を配合することでミストの発生を低減できます。粘度を上げる方法と異なり、加工物や切り屑への付着量が増えにくく、加工性や後処理への影響を最小限に抑えられます。導入時は、抑制剤の効果や機械への影響、コスト面を総合的に評価することが重要です。

精製度の高い鉱物油の使用

切削油のミスト発生抑制には、精製度の高い鉱物油を使用する方法も有効です。通常の鉱物油には低沸点成分が含まれ、加工中に微細な液滴となって空気中に飛散しやすくなります。これに対して、高精製の鉱物油は低沸点成分を除去していて、油の微粒子化が抑えられ、ミスト発生量を低減できます。加工性能や潤滑性を維持しつつ作業環境を改善できますが、精製度の高い油は一般的にコストが高いです。

ノンミストタイプの切削油の使用

ノンミストタイプの切削油を使用する方法も有効です。油剤の組成や添加剤の工夫により加工中の微粒子化を抑制した製品で、空気中への飛散量を大幅に減らすことができます。従来の油に比べて作業環境の改善や作業者の健康リスク低減に効果が高く、換気や捕集装置の負荷軽減にもつながります。導入にあたっては、加工性能や潤滑性、コストとのバランスを考慮し、適切な製品を選ぶことが重要です。

作業現場でのミスト飛散防止策

切削油の種類によるミスト発生抑制策のほかに取り組みたいのは、作業現場でのミスト飛散防止策です。作業環境を整えることで、発生したミストの飛散を軽減し、安全な作業を確保できます。作業現場でできるミスト飛散防止策を紹介しますので、参考にしてください。

ミストコレクター・換気の設置

作業現場での切削油ミスト飛散防止策には、ミストコレクターの設置と換気システムの活用が有効です。ミストコレクターは加工機周辺や作業空間に配置し、空気中の微細油滴を吸引・除去することで拡散を抑制します。さらに、適切な換気システムを導入することで、作業場内の空気の循環と排気を強化し、ミスト濃度を低下できます。両者を組み合わせることで、作業環境を大幅に改善し、作業者の健康リスクや機械への付着によるトラブルを減らす効果が期待できます。

囲いやカバーで物理的に遮断

機械のエンクロージャーや加工エリアのカバー設置も、ミスト飛散防止の有効な手段です。エンクロージャーは機械全体を密閉することで、加工中に発生するミストの拡散を物理的に防ぎ、作業者の呼吸域への影響を抑制します。また、加工エリアにカバーを設けることで、発生源付近でミストを閉じ込め、周囲への飛散を低減できます。これらの物理的対策は、換気や捕集装置と組み合わせることでさらに効果が高まり、安全で快適な作業環境を維持できます。

作業者の健康保護

切削作業においては、作業者の健康保護が何より大切です。健康保護の方法は、ミストや油煙の吸入を防ぐことが中心となります。適切な個人用保護具(PPE)の着用が必須です。防護マスクや保護メガネ、耐油手袋などを使用することで直接的な接触や吸入を防ぎます。作業環境の改善も不可欠です。換気設備やミストコレクターの導入により空気中濃度を低減します。さらに、定期的な健康診断や作業者への安全教育を実施し、症状の早期発見や正しい作業手順の理解を促すことも重要です。これらを総合的に組み合わせることで、作業者の健康リスクを最小限に抑え、安全な作業環境を維持できます。

ミスト飛散防止には適切な設備のメンテナンスも重要!

切削作業では、ミストや油煙が作業環境や健康に影響します。対策として、油剤の粘度調整やミスト抑制剤、高精製鉱物油、ノンミスト油の使用、ミストコレクターや換気設備、エンクロージャーやカバー設置などが有効です。

設置した設備は、継続的なメンテナンスが重要です。ミストコレクターや換気装置のフィルター交換など定期的な点検を行い、対策効果を維持する必要があります。

現場の生産方式別・切削油
(クーラント)

⾃動希釈装置3選

ここでは、生産方式別に切削油(クーラント)を自動供給できる希釈装置を紹介します。自社の生産方式に合わせて適切な装置を導入し、生産性アップ・業務負担の低減・コストダウンを目指しましょう。

連続生産方式
現場には
自動希釈装置
「MAKKY-MINI 65-D」

Makky Mini 65-D(真岐興業株式会社) 引用元:真岐興業株式会社
(https://makky.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈液をエアーポンプで供給する方式を採用。加圧タンク不要で内圧の変動による作業中断の発生なし。長時間の連続稼働でも希釈液を安定供給。
  • 離型剤(原液)の空容器を希釈液のタンク代わりにして利用する仕組み。専用タンクを必要としないため、洗浄や補充による作業中断が無い
  • 生産環境や特殊な作業条件に合わせて機能追加可能。圧送ポンプの自動復帰回路やマシンインターロック、凍結防止ヒーターなど。

公式サイトで
装置の仕様をチェック

受注生産方式
現場には
クーラント自動希釈装置
「MX-600C」

クーラント自動希釈装置(株式会社CEM) 引用元:株式会社CEM
(https://www.kcem.co.jp/product/)

特徴
  • 希釈率を1.0~20.0%の範囲で精度±0.2%で管理。受注生産方式で求められる製品ごとに異なる濃度に設定できるため、個別の品質基準にも対応可
  • 使用量や濃度設定を記録する機能があるため、受注ごとの履歴管理可。品質管理の問い合わせにも対応しやすく、受注生産の信頼性が高まる。
  • 一つの装置で複数の異なる希釈率を同時に設定・供給可能(オプション機能) 。顧客のニーズや仕様に応じた対応ができる

公式サイトで
装置の仕様をチェック

ロット生産方式
現場には
クーラント液管理システム
「Will-Fill AIO」

クーラント液管理・自動調整システム(WILL-FILL) 引用元:WILL-FILL
(https://will-fill.com/ja)

特徴
  • クーラント液のレベルや濃度、水圧、ポンプの速度など、12種類のパラメータを同時に測定・管理可。異なる製品ごとに別の条件が必要になるロット生産に適する。
  • クーラントの残量監視と補給機能により、異なるロットでも連続して作業が行われる。手動操作が少なく、生産の流れを途切れさせない。
  • 定期的にクーラント液の状態を整える機能を搭載。液体成分が均一に保つことができ、ロットごとの品質ばらつきを防げる

公式サイトで
装置の仕様をチェック